40代ミニマリストが猫(FIP)を預かった話|「別れ」

獣医師「もう、薬も無理に飲ませなくて大丈夫です。…最期はゆっくり過ごさせてあげて下さい」

私「……わかりました。ありがとうございました」

2023年5月3日、突然我が家に猫がやってきました。しかも衰弱した状態で…。

こんにちは。 猫派のミニマリストYAITAです。ライター兼ブロガーとして活動しています。音に過敏反応してしまう“聴覚過敏”を抱え、作業の全てをiPadだけで行う40代オジサンです。

今回で、この猫に関する記事は最後となります。もう、私にできることがないからです。

経緯

2023年のGW、衰弱状態で危険な状態の猫を、家で預かることにしました。そもそもは義父の家で飼われている猫ですが「放っておけばいい」「病院に連れて行くお金は無い」という態度に、どうしても納得できなかったんです。

看病の甲斐あってか、幾分か体力が回復してきたかと思えた5月5の夜、激しい嘔吐を繰り返して苦しむ猫。翌5月6日、GWでも開いている動物病院を知り救急で通院。

検査の結果、FIP(猫伝染性腹膜炎)である可能性が高く、そう長くは持たない事実を突きつけられます。せめて点滴治療だけでもと、2日続けての点滴治療とステロイド注射、腎臓機能改善の薬を処方していただきました。

そして5月7日(日)、2日目の点滴治療を終えた猫を実家に返し、怒涛かつ幸せなGWを終え、部屋には猫壱の皿が残った状態です。私の管理するモノが増えました。

実は、5月8日(月)にも点滴治療を受けるために通院しましたが、その日は実家に帰しています。そもそも、私が飼っている猫ではありませんし、猫も実家の方が落ち着くからです。

その後、固形の総合栄養食を食べられるほどに回復。体重も3.1kgに増加し、毛並みも良くなってきました。とはいえ、病気が治ったわけではありません。

継続して薬を処方してもらいつつ、ほぼ毎日実家へ顔を出して猫のお世話をしてきました。

しかし5月21日(日)の夕方頃、2日ぶりに実家を訪れると、涼しげな床で寝転ぶ衰弱状態の猫を発見。

「昼頃から調子が悪かった。連絡しようと思ったが、忙しい(私が)と思って連絡しなかった」と義母。

呼吸は荒く、とてもグッタリしている猫を見た私と妻は、私達の家に連れて看病すると提案。

こうして、また衰弱した猫の看病生活がはじまります。

5月22日の診察で体重は3.1kg〜2.85kg。そもそもこの猫は、生まれつき腎臓が弱く、脱水症状が続いたことで腎臓に負担がかかったのでは?というのが獣医師の見解でした。

点滴とステロイド注射を受けつつ、医師から下記を告げられます。

  • 定期的に保水(点滴)が必要であること
  • 改善されないようなら、明日(23日)も受診すること
  • 最低でも週に1回以上は点滴を受けること
  • 上記3点を維持できなければ危険であること

23日も通院し、普段とは違う獣医師にこれまでの経緯を話すと…

「1日おきに保水した方がいいですね」と、より厳しい現状であることを伝えられました。帰宅後、久しぶりにグルーミング(毛繕い)する猫を見つつ、猫の様子を伺うことに。

そして25日(木)、10時に動物病院へと向かいます。

受付

手慣れた感じで受付を済ませ、今日は2番目。私の後ろには、すでに6組ほどが並んでいました。相変わらず、私以外は犬。おそらくフィラリアワクチンでしょう。

この猫にも、元気になったらワクチン打たせてあげたいなぁ…と考えながら順番待ち。

撮影

体重は2.80kg(-0.5kg)。ほとんど食事を受け付けず、水は一切飲もうとしないので、シリンジで少しずつ飲ませているが大丈夫か?という質問に…

獣医師「やっぱり無理矢理は良くないですね。誤嚥の可能性がありますので」ともっともな指摘。

そこで「スープ状のオヤツや、チャオチュールを水で薄めて与えるといい」と教えて貰いました。

スープはすでに飲んでくれないと分かっているので、チュールを水で薄めてみよう…いや、ほたて味が実は好みとか?と考えていた時、医師が猫の異変に気づきます。

獣医師「お?…ちょっとレントゲン撮ってみましょうか」

聴診器を猫のお腹に当てて音を聴きながら、予想外のレントゲン撮影を提案されます。

現実

実際のレントゲン写真です。

肺の炎症、腹部にできた腫瘍の悪化が見られました。素人目ではサッパリ分かりませんが、蜘蛛の糸状になっているものが炎症の様です。初診の際にレントゲンを撮りましたが、これほどひどい状態ではなかったのを記憶しています。

続けて点滴を行うものの、今まで以上に猫が嫌がり、自ら針を抜いてしまったので中断。

そして冒頭の会話を医師と交わし、私の中で、あえて忘れようとしていた出来事がフィードバックします。

5月6日の初診で言われた「もう長くは持たない」という現実。

それが、もう目前であることに。

買物

会計待ちの間に、総合栄養食のチャオチュール数日分と、猫が好んで食べる鳥ササミのオヤツを購入。

最期くらい、美味しい物をたくさん食べてほしい……食べないけど。

冒険

帰宅後、私の部屋からリビングへの扉を開け、猫がリビングへ行けるようにしました。もう、この家に来ることはないはずなので、最後くらい猫に冒険でもしてもらおういった感じです。

すると、自らリビングの方へ歩いていき、ダイニング部分に置かれたソファー(私の部屋ができる前の居場所)に居座りました。

隣に座って妻と義母に状況を報告後、妻を迎えに行くまでの約6時間、隣で眠る猫を起こさないよう、ただ猫を眺め続けます。

途中でご飯を与えようとしますが、もう、ほとんど受け付けません。

実家

18時頃に妻と実家へ向かって猫を帰し、改めて状況を報告しました。

また、猫を看取ったら、トイレとケージは綺麗に掃除するよう伝えました。FIPの感染は、猫の唾液や鼻水、トイレなど、猫同士が触れ合う時だからです。

仮に多頭飼育の家にFIP感染の猫が紛れ込んだら、全ての猫が感染し、ほとんどが助からないことを意味します。

……やはり実家の方が落ち着くんでしょう。猫の表情が気持ち和らいだ印象を受けました。

大丈夫。もう、連れ出すことはしないよ。

2年

約2年前の雨が降る日、義父がずぶ濡れ状態の子猫を拾ってきました。

その猫は、なぜ1匹でその場所にいたのか。なぜ、母猫の側にいなかったのかは分かりません。

生まれつき腎臓が弱いことに気づいた母猫が、その猫だけを見捨てたのかもしれない。または、心無い誰かが、猫を置き去りにしたのかもしれません。それとも、単に子猫が母猫から逸れたのかも。

……分かっている事実は、たった2年にも満たない生命が今、最期を迎えようとしています。

FIP(ドライタイプ)に感染した猫の余命は、長くて半年だそうです。つまりこの猫は、半年以内に何らかの原因で感染したことになります。早期発見できれば治せるとはいえ、致死率がとても高い恐ろしい感染症です。

なぜ、あの子に感染したのか。なぜ、あの子だったのか。なぜ、早く気づけなかったのか。なぜ、助けられなかったのか。なぜ、FIPという恐ろしい病気を知らなかったのか。

自分自身の無力さに腹が立ちます。

最後に

猫記事に関するアクセスが一定数ありましたので、これまでの経緯や猫の進捗をお伝えしてきました。ですが、この猫に関する記事は、本当に終わりとします。もう、私にできることがないからです。

この猫をきっかけに、FIPという恐ろしい病気がある事実を知れました。猫の生態や猫のしぐさ、グルーミングなどの言葉も知れました。全て、この猫のおかげです。

これから私にできることは、FIPの存在すら知らずに猫を飼っている人へ、少しでも情報を伝えること。

病気で苦しむ猫が1匹でも少なくなるよう、発信し続けることです。

こんな可哀想な猫を、これ以上増やしたくありません。

FIP(猫伝染性腹膜炎)は猫同士の接触、主に唾液や鼻水、トイレで感染します。

もし、あなたが猫を飼っているのなら、定期的な健康診断をおすすめします。FIPは早期発見で治療できる場合があるからです。

猫と楽しい毎日を過ごすためにも、あなたが猫のしぐさや異変に気づいてあげてください。

  • 猫のお腹だけが妙に膨らんでいませんか?
  • 猫のお腹にしこりがありませんか?
  • 猫の目が赤くなっていませんか?
  • 猫が赤い涙を流しませんか?

上記に該当する猫=FIPとは限りません。人間に様々な病気があるように、猫にも様々な病気があります。とても素人目では判断できません。

加えて、すでに猫を飼われているご家庭で、新しい猫を拾ってきた場合、まずは拾ってきた猫を隔離してください。拾ってきた猫がFIPに感染していたら、飼われている猫にも感染するからです。

そんな最悪な結果を、あなたは望んでいないはず。

だからこそ、拾ってきた猫の健康状態を確認した上で、新しい家族に迎える。または里親を探すなどを検討してください。

最後までご覧いただき、また、この猫を見守っていただき、ありがとうございました。

2023年5月 YAITA